乙女ゲームおたくの日記

主に乙女ゲームの感想を書きます。

ジャックジャンヌ 三周目感想 いつか才能の泉が枯れても

三周目はみんな大好き根地先輩こと根地黒門(cv.岸尾だいすけ)を攻略しました!いやー面白かったな。
既読部分はスキップすればいい話なんですが、ついつい見返したくなってしまって(特に創ちゃんが出てくる場面は全部!)やたらと時間がかかってしまってます。
楽曲がとてもいいのでスキップ不可の音ゲーも楽しく遊べてますが、いつか飽きてしまう前にコンプリートしたいところですね。

根地先輩、一人で脚本も演出も組長も担いながら自分も舞台に立つという演劇モンスターで、おどけた言動が多いものの演劇に対する情熱は誰もが認めています。
発売直前に投稿されたジャック・オ・蘭たんさんによる宣伝実況動画では「普通に飲みに行きたい、舞台の話聞きたい」みたいなことを言われていました。
実際、彼が登場するシーンは彼が喋っているだけで面白いし、攻略とか置いといても友達になりたい魅力的な人物ですよね。

 

↓この先少しネタバレあり↓

 

根地先輩には、親密度イベントで初めて明かされる情報があります。
というのも、実は女性が苦手だとのことです。ユニヴェールに入学した理由も男性だけで舞台を作れるから。
飄々とした性格の彼が特定の属性の人を恐れていたのは少し意外でしたが、すぐに、納得もできるなと思いました。
彼の演じる女性(サンプル二つですが・・・)って「女嫌いの男が考える女」感が強いんですよね。非常に戯画的で。
女性を恐れるようになった理由は、かつて才気溢れる劇作家であった父が愛人に入れ込むと同時期に才能を失っていき、それを嘆いて海で自殺してしまったから。
幼い根地先輩の目には「女性」という謎の存在が父を破滅に導いたように見えたのでしょう。

演劇をこよなく愛する根地先輩は、実は女性であるとはつゆ知らず主人公に興味津々です。
主人公は溢れる演技の才能と周りを活かす協調性を兼ね備えており、舞台の歯車になるために生まれたような存在ですからね。
君の才能に形があればキッスの洪水を浴びせたとか、君が女性なら才能を世に残すために求婚をしていたとか、脚本家らしく言葉を尽くして褒め倒してくれます。
しかし先のような軽口は、主人公が女性とは思ってもみないからこその発言。
やがて何か感づいたらしい根地先輩は、主人公に自分を誘惑する女性を演じさせてみることで確信を得ます。
(この場面、要求通り誘惑する主人公、もとい寺崎裕香さんの演技が色っぽくてドキドキします。
一つ目の親密度イベントだったか、いきなり悪女を演じさせられたときの「あなたも甘えてみれば?『にゃーん』ってね」みたいな台詞もすごく可愛い。
今作における寺崎さんの功績は凄まじいものだと思います。中性的な声質に、シナリオに説得力を持たせる演技力、そして歌唱力!高く澄んだ歌声がたまりません)

主人公の秘密に勘づいたのとおそらく同時に、主人公に恋をしてしまったと気づく根地先輩。
ユニヴェールにいれば逃れられると信じていた「女性」がずっと傍にいた事実に戸惑うのはもちろん、自分も父の二の舞になってしまうことを予感して恐怖します。
案の定、最終公演を前にして脚本が全く思いつかなくなってしまいます。
でもこれは恋のせいというより、「女性を愛したら才能が消える、父のように」「才能が消えたら死ぬしかない、父のように」という暗示を自分自身にかけ続けてきた結果のような気もします。
彼のルートは、そんな暗示から彼を解放するお話でした。

ルートの中で彼は、父を擁護したいあまりに愛人および女性を悪魔化してしまっていたことや、それ故に自分では悪魔化された女性しか演じられなかったことを告白します。
自分がそんななのにみんなに敢えて苦手な役をやらせたりしてきたことを「好き嫌いする子どもの前で自分は何でも食べられるみたいな顔をするけど自分の嫌いなものを食卓に出してないだけの親」に例えて自嘲する根地先輩。自己分析が的確・・・!と思いました。やはり優れたエンターテイメントを作れる人は客観視に長けているのでしょう。

根地先輩は自分の問題に向き合うことで舞台への前向きさを取り戻します。脚本を書けなくなっただけではなく舞台に関係するあらゆるカンをも失ってしまった彼ですが、めげずに周囲に助言を求め、いろいろ言われながら楽しそうに稽古をする姿には心を打たれました。そんな根地先輩を支えるクォーツのみんなにも。
これも日頃の行いあってのことですね。いつもふざけていて何が本心かわかりにくい根地先輩ですが、舞台への熱だけは誰も疑いませんから。
今作は共通ルートの長さが特徴ですが、積み重ねただけはあると思わせる説得力があり、個別ルートでしっかり効いてきます。

最終的にはクラス優勝を獲得し、根地先輩は不調から完全に回復してめでたしめでたしとなります。
まず「才能が消えたら死ぬしかない」という暗示を「才能が消えても大丈夫」と思えるようになることで克服してから、「女性を愛したら才能が消える」という暗示も克服することが叶うという流れが美しいです。さらに、父の死が才能の喪失を嘆いての「自死」であることすら思い込みかもしれない可能性も示されます。あくまで可能性ですが、過去の呪いが一つ一つ解かれていく様がなんだか感動的です。
主人公への愛で満たされながら舞台で才能を発揮する根地先輩。いつか本当に才能が失われたとしても舞台を続けられることは実証されているため、文句なしの終わり方です。
個人的には、愛を知って天才がただの人間になる展開も好きですが、少なくとも根地先輩の才能の泉はまだまだまだ枯れることを知らないようです。

 

そういえば根地先輩のルートではいわゆる敵役?は出てきませんでしたね。強いて言えば根地先輩の過去のトラウマが敵か。
スズくんルートでは紙屋くん、創ちゃんルートでは百無くんが突っかかってきたので、根地先輩ルートでは田中右先輩が?いよいよ神秘のベールを脱ぐのか??なんて思っていました。
しかし田中右先輩、いかにもヒールっぽいビジュアルと設定なのに彼自身は結構、いい子ですよね。脚本が書けなくなった根地先輩に嫌みの一つでも言ってくるかと思えばそんなこともなく(どさくさに紛れて主人公を勧誘してはきますが)最後には拍手とまっすぐな賞賛の言葉も送ってくれます。
ああ見えて彼は、何かと言葉足らずなだけの真面目な演劇少年かもしれません。圧倒的な才能とカリスマ性のせいもあって、信奉者を悪役ムーブに走らせる素養はあるようですが。
田中右先輩のことがもっと知りたいな。彼のエンドはあるんでしょうか?

 

これまで三人攻略してきて実感するのは主人公のカウンセリング能力の高さ。
作中で主人公は幾度となく苦しんでいる仲間に寄り添い、良い方向へ導きます。相手が求める存在を「演じている」のではないかと言われるほどに。
舞台の歯車としてだけではなく乙女ゲーム主人公としても最高の素質ですよね。制作者インタビューには希佐ルート(ノーマルルート?)に今作の全てが詰まっているというようなことが書かれていましたが、どんな内容なのかとても楽しみです。六人攻略したら読みたいです。

 

あと、無茶ブリで宙返りを要求されてでんぐり返しする創ちゃんが大変可愛かったです。根地先輩ルートのMVPは彼です。はい。