乙女ゲームおたくの日記

主に乙女ゲームの感想を書きます。

ジャックジャンヌ 一周目感想 古き良き乙女ゲームの香り

ブロッコリーより3月18日に発売された『ジャックジャンヌ』。早速一人攻略しました!
感想を一言で言うと、このゲームめちゃくちゃ面白いです。早くも今年のベスト乙女ゲームが決まったかもしれません。
公式に「乙女ゲーム」とか「女性向け恋愛ゲーム」といったジャンル名は付けられていないので、どの程度恋愛っぽい描写が見られるんだろうと思っていたのですが、蓋を開けてみるとかなりしっかり乙女ゲームしてました。少年らしく初々しくて爽やかな恋愛模様が、演劇という要素と絶妙に噛み合っている作品です。

 

まずはあらすじとシステム面について書きます。
舞台は男の子だけが入れる演劇学校ユニヴェール。主人公は女の子ですがユニヴェールに強い憧れを抱いています。突然現れた学園長がなぜか協力してくれることになったので(この辺誰かのルートで理由は明らかになるのでしょうか)性別を偽って入学することになります。
基本はシンプルなパラ上げゲームです。演劇に必要な能力が六つに分けられていて、一日ずつどの項目を勉強するか選択します。(一週間単位で一つの項目を学習できる時短コマンドもあります)
育成ゲームにありがちな、これを上げたらこれが下がる、まずこれを上げればその他を上げるのに有利になるみたいな戦略性?はおそらく一切ありません。ただバランスよく選んでいけばよさそうなので簡単です。悪く言うと単調でもあり、ちょっぴりワンド(無印)を彷彿とさせます。
しかし、頻繁にメインストーリー関係のイベントが挟まれるので単調さはうまく紛らわされています。
土日は好きなキャラクターに会いに行くことができ、メインストーリーに関連した短い会話イベントが発生します。私は今回ひたすらスズくんを選び続けましたが、会話に使い回しが全くないことに驚きました。これは地味にものすごいテキスト量なんじゃ?作中で経過する時間はまるっと一年間で、飛ばされる期間も確かほとんどなかったと考えると土日って相当な回数あったと思いますが。スズくんがいない日もありましたが七、八割くらいはいた気がします。
攻略対象は六人で、六つのパラメータにそれぞれ対応しています。メインストーリー中の選択肢や土日のイベントで上がる好感度と、対応したパラメータ、両方の条件を満たすことで恋愛イベントが発生します。好感度は土日に会えばすぐ上がりますが、パラメータの方は意外と時間がかかります。条件を満たすためにパラ上げして、よし発生した!という時のちょっとした達成感はときメモGSやコルダといった古き良き乙女ゲームを彷彿とさせます。
上手な人がやれば途中まで股がけは可能なんでしょうか?でもせっかく土日会話が豊富に用意されているので全部見たいし、キャラの人数分は初めから周回することになりそうです。

 

次にシナリオについてです。有名なクリエイターが全面的に関わっていて見た目の華やかな作品はシナリオが残念なものという先入観があったのですが、今作はシナリオもかなり質が高いと感じました。
素人上がりも含めた集団が公演の成功という一つの目的のために取り組み、時に自分とタイプの違う役を掴めず悩んだり、時に劣等感で押しつぶされそうになったり、時に意見が合わず衝突したりしながら最後には全てが良い方向に転がり大団円に繋がる流れは、同じ演劇ものであるA3!を彷彿とさせます(彷彿とさせてばかりですね)。
ただ努力してうまくなるわけではなく、こういう理由でできなかったことをこれがきっかけでできるようになった、という感じで成長の理由に納得ができるように作られているところが良いと思います。
スズくんが持ち前の愚直さで一つ克服してはまた別の壁にぶつかってもがく様子や、自信なさげで一時期は本当に苦しそうだった創ちゃんがあるきっかけで輝きだす様子が生き生きと描かれています。一年生よりずっと経験豊富な先輩たちもまたそれぞれの問題を抱えていて、公演を乗り越えるたびに少しずつ克服されていき、クラスの絆も強くなっていくのを見ていると、良質な青春ドラマを見ているような感覚になりました。恋愛シーン抜きでも素直に楽しいと思えるほどです。

 

それなのに、さらに恋愛シーンも面白いのが今作でした。今回攻略したスズくんこと織巻寿々(cv.内田雄馬)のグッドエンドの感想をざっくりと書きます。少しネタバレあります。

 

主人公の隣で演じ続けたいけど、芽生えてしまった恋愛感情を舞台上で隠せないかもしれないと思い悩むスズくん。
一年最後の公演で、彼は主人公演じる少女に恋をする少年の役を演じることになります。
最初は「隠さなきゃ」という意識と衝突してぎこちない演技をしてしまいますが、なんやかんやあって自分の気持ちに正直に演じることに決め、それからは打って変わって演技がよくなります。
しかし、その後また別の問題が生じます。台本上では少女の台詞を遮ってキスをする場面で、スズくんは違和感を覚えるようになったのです。
違和感の正体は「自分だったらそんなことしない」。相手の言葉にはちゃんと耳を傾けたいし、キスはもっと丁寧にしたい。相手をもっと大事にしたい!と。(この場面、突然自分の恋愛観を開陳したスズくんに対する鳳くんと創ちゃんの反応がすごく面白くて好きです)
「脚本を演者が超える」瞬間ですね。別の公演でも白田先輩がこれを成し遂げていましたが、演劇がただ脚本の思惑通りに進むのではない「生き物」だと示すようなエピソードでどちらも印象的です。
主人公の側にも葛藤がありましたが、結局はお互いに自分の心に正直に演じたことで素晴らしいラブシーンとなります。その後改めて告白してエンド。私はどうやらベストエンドを逃してしまったようなのですが(パラ上げ不足?)これがベストエンドでもおかしくない、甘酸っぱく爽やかな結末です。
公演後に根地先輩に会いに行った時に聞ける、「織巻くんからキスしたように見えて実は・・・」という話がとても良かったです。
明るくて押しが強いように見えて、いつも相手を尊重して自分の意思を押しつけない、優しいスズくん。そんな彼の良さをしっかりと堪能できるシナリオでした。
鈍感そうなので、主人公の性別バレもうっかり着替えを見ちゃって・・・みたいなパターンかと思いきや言い当ててくるとは。しかも結構前から察していたとは。そんなところも素敵なギャップでした。

 

見られなかったベストエンドも気になりますが、次は創ちゃんを攻略しようと思います!覚醒後の、ちょっぴり毒のある感じが大変好みなので楽しみです。