乙女ゲームおたくの日記

主に乙女ゲームの感想を書きます。

even if TEMPEST 宵闇にかく語りき魔女 感想② 今の時代らしい良作乙女ゲーム 

いま乙女ゲーム界隈で、オトメイト公式ファンクラブ終了決定のニュースが話題になっていますね。
以前、複数の主要スタッフが退職&別会社立ち上げしたというのもあって、いよいよオトメイト終了か?乙女ゲームの今後はどうなる?と不安になってしまいますね。
もう何年も前から、乙女ゲーム界の質量を支えているオトメイト。どうか末永く続いてほしいのですが。
サブスクという今風の集金システムに切り替えただけだと思いたいところですね。

 

さて、本題に入ります。
テンペスト魔女、バッドエンドを除いてクリアしました!!
いやー面白かった。いろんな意味で、今の時代ならではの乙女ゲームだなと思いました。
シナリオが緊迫感たっぷりでダレることなく面白い。ほぼ一本道のシナリオで後日談のみキャラ別という性質上、糖度低めとはいえ萌えも十~分にありました。特にルーシェン殿下が私の好みにクリーンヒットで最高でした。
ほぼ前編通してシリアスな今作ですが、笑える場面ではちゃんと笑えるので、緩急の付け方が巧みだったと思います。特にルーシェン殿下の初々しいラブコメっぷりが好きです。

前回の感想でWeb小説っぽいと言いましたが、シナリオを進めると異世界転移要素もあったりしてますますWeb小説的でした。文脈に慣れていないと少々戸惑うかもしれません。
でも作中で悪事を働く人物(コンラッド、エヴェリーナ、枢機卿など)が特に断罪されずに終わるのはWeb小説らしくない気がしました。悪人に容赦ない鉄槌でざまぁ、みたいなのが人気出るイメージなので(ロクに読んだこともないのに偏見がひどい)。
でも、おそらくそこが今作では重要なポイントなのでしょう。
人間は過ちを犯すが過ちをなくすために自由を奪うことは許されない、醜い欲も美しい愛も人間の本質である。みたいなのが主題なのかなと。だから断罪して一件落着、という終わり方をさせなかったのではないかと思います。
人と神が絡む話って大体そういう人間賛歌的なオチになるので、それをいかに説得力をもって描けるかが重要になってくると思います。その点テンペスト魔女は、主人公が文字通り命を懸けて敵に挑みながら、悪意に傷つき善意に癒やされ、最後は仲間と力を合わせて目的を達成する過程が丁寧に描かれているので「人間はいいものかしら」と思わせる説得力は十分だったと思います。

今作の最推しは予想通りルーシェン殿下。
主人公への思いが一途を通り越してキモいの域に入っているのを作中で指摘されていて笑いました。ちゃんとツッコミが入る風真くんって感じ。
繊細で泣き虫でヘタレで、冷静を装っているけど主人公が絡むと途端に我を忘れてその後しおらしく反省して。可愛いったらないですよ。永遠に成長しなくていいです。毒親か?
せっかく表情差分が豊富なのだからみっともない泣き顔も見せてほしかったですね(まだ言ってる)。
ティレル、クライオス、ゼンもそれぞれ非常に魅力的なキャラでした。みんな善良な人ですが状況によっては主人公と敵対することもあり、それがかえってキャラのブレない芯を引き立てていたと思います。
クライオスの「大切なものは大切にするだけでは守れない」という台詞が印象的でした。表面的な態度はともあれ、彼も常にアナスタシアのことを思ってくれましたよね。

あと、それなりの本数乙女ゲームをやっていて初めて出会いましたよ「悪役令嬢」。お目にかかれて光栄ですオーラ嬢。
オーラ嬢、善か悪かというと悪ではありますが、言うて魔女に唆されでもしない限り大した悪事を働けない無力な令嬢なので(言い方)憎いよりも哀れだという感情が勝ちました。
主人公を敵視しながら擦り寄って甘えてもくるのが憎みきれない。エヴェリーナの元に生まれなければ、ごく普通の天真爛漫な可愛い女の子だったかもしれませんね。

また、今作の大きな魅力の一つとして触れておきたいのが、立ち絵の表情が豊かであること。別の作品では「怒り顔」一種類で済ませそうなところでも、何種類もの差分が用意されていた気がします。
他キャラの台詞の合間合間でも表情が本当によく変わり、それが時には下手な台詞よりも雄弁だったりするのが面白い。特に、主人公が性的に奔放であるという嘘をオーラに吹き込まれてショックを受けたり悲しんだり心配したりするルーシェン殿下の百面相ぶりときたら。
乙女ゲームの主人公が、コロコロと変わる表情を褒められがちな理由がわかりました。目が離せないんですよね。他の作品は「音声だけ聞こえればいいや」とオートモードにして別の作業をしてしまうことがありますが、テンペスト魔女はこれがあるのでほぼオートモード使いませんでした。

プレイしていて少し気になったのは、誤字脱字の多さです。
文章そのものに違和感を抱くことは私はありませんでしたが、もう少し丁寧に推敲してほしかったです。声優さんのボイスと微妙に違う点も多く、地味に没入感を削がれました。
逆に言うと不満らしい不満はそれくらいで、普段乙女ゲームをやらない人にもおすすめしたいくらいエンタメとして出来のいい良作でした。

 

以上、『even if TEMPEST 宵闇にかく語りき魔女』の感想でした!
この作品がどんどん売れて、ボルテージが次の作品もコンシューマで出してくれたりしたらすごく嬉しいな。すでにネット上では好評ですが、もっともっと話題になりますように。