乙女ゲームおたくの日記

主に乙女ゲームの感想を書きます。

黒蝶のサイケデリカ感想 乙女ゲームでは恋愛がしたい!

ブログを書くのが随分と久しぶりになりました。
先日、プレイしてみたかったゲームをまとめ買いしたのでまた感想を少しずつ書いていきたいです!

まずはオトメイトから2015年に発売された『黒蝶のサイケデリカ』。
漫画家の結賀さとる先生がキャラデザ・原画を務めたことで話題でした。
(例のトレス騒動どうなったんでしょうか。あれがあるからカラマリをプレイする気になれない・・・)
プレイ前の印象としては、主人公がボイス付きでしかもフルなんて珍しいなーくらいのもので、事前情報はほとんど仕入れずに遊び始めました。
黒蝶、スタンダードな乙女ゲームに慣れた身には新鮮に感じる点が多かったです。総合的には楽しかったのですが(飽き性の私がフルコンプできる時点で相当楽しめた証拠)萌えたかというと正直、微妙かな・・・

まずは特徴的なシステム面に触れたあと、シナリオ全体の感想、キャラ別感想と続けていきます。

 

・システム面
このゲームの最大の特徴の一つが、フローチャート形式のシナリオです。
プレイ中いつでもフローチャート画面を開くことができ、これまでに通ったシナリオならどこにでもジャンプできる便利仕様です。
バリアブルバリケードも一応フローチャート形式でしたが、ほぼ一本道になっていてシナリオのブツ切り感だけ強く抱かせるものだったのに対して、黒蝶のチャートはなかなか分岐が細かいです。
どこが分岐点か一目でわかり攻略しやすい反面、私のような飽き性がプレイすると、ルートを途中のまま放置してあっちこっちに飛んでしまい時系列がぐちゃぐちゃ&物語に没入できないという弊害があります。ありました。

また、今作にはミニゲーム要素があります。敵を狙って撃つシューティングゲームで、スコアに応じてもらえるポイントと引き換えにショートエピソードを見ることができます。
本筋のストーリーにほのぼの要素や萌え要素が不足している分、断片的なショートエピソードで補完する形式のようです。
フルコンプのためにはミニゲームと向き合わざるを得ないのですが、私はアクションゲームとシューティングゲームが大の苦手なので(敵が近づいてくると軽いパニック状態になってしまう)正直、苦痛でした。頑張って何度かやっていると安定してSが取れるようになりましたが、フルコンプした今、もう絶対にやりたくないです。
乙女ゲームのゲーム要素はパラ上げぐらいにしてほしいな。

 

・シナリオ全体の感想
シナリオの性質的にはネタバレ厳禁ですが、6年も前(!)のゲームなのでまあ、よかろうと思います。
謎の館に閉じ込められた少年たちと主人公は、実は一人を除いて全員幼なじみでした。
昔みんなで参加したサマーキャンプで不幸な事故に見舞われ、一人は死に、一人は昏睡状態に。
残された主人公含む三人は、年月が経っても「自分のせいで事故が起きた」「自分が臆病だったから助けられなかった」と悔やみ続け、後ろ向きになってしまっていました。
館は生と死の狭間の世界であるため、死んだはずのナツキ、眠り続けているはずのカズヤも当たり前のように一緒にいられたのです。
三人はやがて真実を思い出し、館から出たいという思いが揺らぎます。
館から出ることは現実世界へ帰ることを意味しますが、現実世界にいる以上、二人の友達を死やそれに近い状態へ追いやった事実から逃げられないためです。

このゲームの面白いところは「生と死の狭間」というどっちつかずの世界を舞台にしていながら最後は無情なまでに白黒はっきりつけてくるところです。
現実から目を背けるルートは即ちバッドエンド。現実にいない人、つまり故人であるナツキにはバッドエンドしか用意されていません。
同じく故人である黒幕とも幸せになることはできません(黒幕エンドでは生まれ変わりを示唆してはいましたが)
生きているキャラと、現実で、罪を背負いながらも前向きに未来に向かっていくことでしか幸せにはなれないのです。
普通の乙女ゲームなら攻略対象と銘打って出したキャラとは必ず幸せな未来を用意してくれるものですが、黒蝶は五人中二人もハッピーエンドの存在しないキャラがいます。なかなか思い切った作品ですよね。

ちなみに私は以下の順番でエンディングを見ました。
バッド→ベスト→現実世界→緋影→鴉翅→大団円→鉤翅→山都→紋白→カズヤ→タクヤ→アキ
おすすめ攻略順を調べてみると大団円と緋影を最後に持ってくる方が多いので、私は割と変則的な進め方をしたようです。
私はあまりおすすめに従わず好きに進めてしまうタイプなのですが(シャレマニでも2週目でメイちゃん行っちゃうし)物語を最大限に楽しめそうな順番を考えると、確かに緋影を最後にするべきかも。でもタクヤとアキのエンドを最後に持ってこれたのも後味さわやかで結構よかったと思います。
(個人的に大団円は蛇足だった気がします。死をなかったことにはできない、というのを貫いてほしかった。あったかもしれない未来として描くなら最後に現実に突き落としてほしかったです)

 

・キャラ別感想

紅百合 cv.中原麻衣
主人公。おっとりとしていて世話焼きな女の子です。乙女ゲーム主人公としては割と標準的なタイプですね。
彼女はかつて自分の提案のせいでみんなを事故に巻き込んでしまったことを悔やんでおり、自分を責め続けています。
そんな過去のせいで消極的な面もあるものの、基本的に人当たりがよく誰にでも優しいので、悪い印象はありません。
なにより声が可愛い。最初は、普段乙女向けコンテンツしか摂取してない私の耳にはちょっと可愛らしすぎるように聞こえたのですが、聞いているうちに慣れました。中原さんのぽわっとした柔らかい声が、主人公のおっとりとした可愛さを引き立てている気がします。
普通に、こんな声で喋る優しくて可愛い女の子が幼なじみだったらそりゃ好きになるわと思います。


緋影 cv.石川界人
冷静沈着で少し堅物な頼りがいのある男の子。主人公たちと一緒に閉じ込められた・・・と見せかけての黒幕でした。
館で長い時を過ごすうちに本来の目的を忘れ、人間への憎悪ばかりを増幅させてしまった哀しいモンスター的なキャラです。緋影ルートでは、主人公ならもしかして彼の心を解かすことができるかも・・・と思わせますがあくまで「できたかも」でしかない、なぜならもう「手遅れ」だから――というこのゲーム特有の無情な死生観を感じられるルートになってます。
彼はカズヤになりすまして紛れ込んでいましたが、振る舞いは特にカズヤに寄せてないところを見ると、主人公たちに見せた面は必ずしも嘘ではないのでしょうね。むしろけっこう素だったのでは?
やけに言動が堅いところも、一昔前の時代の人間だったと考えると腑に落ちます。うまくできてるなあ。

 

山都(タクヤ) cv.細谷佳正
ぶっきらぼうだけど実は面倒見がいい系シャイボーイ。
幼い頃、双子の弟のカズヤにちょっとしたイタズラをしますが、それが事故の遠因になってしまったことをずっと悔やんでいます。同じく罪悪感に苛まれている主人公にシンパシーを感じており、二人の関係は悪く言ってしまえばまさに「傷のなめ合い」。
第一印象はすぐキレる怖い子という感じでしたが、一度心を許してくれれば穏やかで優しい部分が目立ちます。最初イライラしがちだったのも、弟のいる病院に早く戻らなければという意識が残っていたためだと考えると仕方ないかもしれません。過去に囚われ続けるのも優しさの表れといえるでしょう。人間性は五人の中で一番マトモだと思います。

 

鴉翅(アキ) cv.柿原徹也
ノリが軽く天真爛漫なように見えて、言動の端々にトゲを感じる子です。私の最推しです。
最初は、人をからかうようなことばかり言うし山都とケンカするし苦手かもなーと思っていましたが、彼が幼なじみの一人でずっと主人公を好きだったと知ると印象が変わりました。
こういう、ノリは軽くて愛は重い的なキャラ好きなんです。普段おちゃらけてるだけに好意を素直に受け取ってもらえないパターンですよね。報われない不憫さと自業自得感が良い。
彼は例の事故の際、震え上がってしまい助けようとすることすらできなかった臆病な自分を嫌悪しています。
そんな自分を変えたいという思いもあり、残された三人の中では唯一未来に前向きになろうとしています。そして主人公とタクヤが傷をなめ合う様子を歯がゆく思っているようです。
主人公の心はナツキの死に囚われていますが、死人は恋敵としてある意味最強の存在。
彼にとっての現実世界は、向き合わなければならないものであると同時に主人公が絶対に振り向いてくれない世界でもあります。館から出たい、けど出たくない。そんな二律背反な感情を抱えるいらだちが、言動のトゲとなって表れたのかもしれません。
そんな人間としての弱さも含めて愛おしく見えるキャラですが、プレイ後に公式の人気投票を見てみると五人中最下位だったという・・・確かにまあ、自分勝手なところが目立つ子ではあるけど!そこが可愛いんですアキちゃんは・・・

 

鉤翅(ナツキ) cv.鳥海浩輔
穏やかで優しい、一歩引いて見守るお兄さん。・・・と見せかけてそうでもない!!そこが面白いキャラでした。
過去の事故で命を落としたナツキ。彼が生と死の狭間の世界にしがみつくのは、生き返って主人公との未来を作りたいという望みのためでした。そのために黒幕に協力し、みんなに嘘をついたりも。
いかにも「僕のことは忘れて幸せになって」とか言いそうな顔してるのに主人公を他の人に譲る気まったくのゼロという。個人的にこのゲーム最大のギャップでした。
その点この作品の世界はあくまで無情なもので、死者は蘇らない、未来など作れないという現実を突きつけてきます。彼とは二人で現実逃避するわびしいエンドしか用意されていないのです。
そういえばショートエピソードで彼がスマホを知らないという一幕がありましたが、あれは彼がスマホ普及前にこの世を去っていたからだったんですね!これを書きながらようやく気づきました。すごいなあ。

 

紋白(カズヤ) cv.松岡禎丞
登場時は敵か味方かわからない紋白ですが、その実は言葉少なながらも愛情深く健気な男の子でした。
事故で昏睡状態に陥った彼は、まさに生と死の狭間にいる状態。ナツキと共に館に閉じ込められますが、生き返るために黒幕に従うナツキと別れ、一人きりで館に潜伏していました。
彼自身は非常に人懐っこい性格なので、長い時を一人で過ごすのはさぞ辛かっただろうと思います。緋影が自分になりすましてみんなの輪に溶け込んでいるのを知ったときの絶望も計り知れません。
緋影の正体をバラして自分こそカズヤだと主張することもできたはずですが、昔のように楽しそうにしているみんなを邪魔することができなかったという紋白。ぱっと見自己犠牲キャラっぽいナツキよりもずっと自己犠牲的です。他のキャラはそれなりに利己的な面が描かれていますが彼には汚点らしい汚点がありません。
だからこそ人気投票1位にも納得がいきますが、個人的には多少みみっちいところある子の方が萌えます。

 

・総括
一言で感想を言うと「よくできたアドベンチャーゲーム」という感じです。
シナリオが進むごとに意外な真実が明らかになっていき、プレイヤー目線でのキャラの立ち位置が目まぐるしく変わって飽きさせません。
実際楽しかったからこそ、こうして久しぶりの感想記事も書くことができました。
でも、最初にも書きましたが・・・萌えたかというとちょっと微妙、というのが正直なところです。
そもそも話の主軸が恋愛ではないのです。恋愛がキーの一つではありますが、幼なじみというのもあって5人中4人は物語開始前から主人公のことを好きだし、恋愛の過程のときめきは楽しめません。
ですが「居心地のいい停滞から脱出するためにあがく生者たちの決意」みたいなのが印象的で、シリアスながらも最後には前向きな気持ちになれる良質な青春アドベンチャーゲームでした。

 

でも私はやっぱり・・・乙女ゲームでは「恋愛」がしたいな!