乙女ゲームおたくの日記

主に乙女ゲームの感想を書きます。

オランピアソワレ ヒムカ・朱砂ルート感想と総評

また少し間が開きましたが、ヒムカと朱砂を攻略したので感想を書きます!
ヒムカのルートは他の4人を攻略した後、朱砂のルートはヒムカを攻略した後でないと入れないようになっているだけあって物語の核心に迫る内容になっています。あまり詳細な内容は書きませんがネタバレを含みますのでご注意ください。

ヒムカ(cv.堀江瞬)

クールで無機質そうなビジュアルですが、その実は憧れのオランピアに声をかけられてしどろもどろになってしまうようなピュアでかわいらしい少年なヒムカきゅん。
彼は島民たちに弔い屋と呼ばれており、島で亡くなった人を弔う仕事をしています。
この世界では、死者は弔い屋の特殊な力によって「晶」という色とりどりの石に変えられ、その石は様々な用途に利用されます。
死者を晶に変える力は拔と呼ばれますが、拔を使えるのは現在はヒムカと璃空、そしてオランピアの3人だけとされています。オランピアが拔を使えるのはごく一部の人しか知らず、璃空に弔ってもらうには高額の金がかかるため、島の死者はほとんどヒムカが弔っているようです。

生きている人間をむりやり晶にすることも可能ですが、禁忌とされています。
このルートでは、ヒムカにその禁忌を犯した疑いがかけられますが、彼と関わるようになって彼の優しさを知ったオランピアはヒムカの所為ではないと考えます。
実際犯人は他にいて、その犯人にはイザナミという女神がバックにいて、イザナミの狙いはアマテラスが蘇るための器であるオランピアでーー
という感じで、物語がなんだか神話じみてきます。作品のキャッチコピーもそういえば「これは辿りついていたかもしれないもう一つの神話の物語」でしたね。これまで攻略してきた4人のルートではあまりそういう要素が出てこなかったのでここにきて雰囲気が変わったように感じました。

このルートでは、謎だらけだったヒムカの正体が明かされます。
彼の正体は、天供島で神のように崇められている卑流呼様だったのです。
このゲームは設定が設定なので、両思いになったからといってすぐに結ばれたりはできず、どのルートも何かしらの障害に阻まれますが、ヒムカルートにおける障害は彼が人間でない故に自分をオランピアの交配相手として相応しくないと考えていることでした。
そのために二人は両思いにも関わらず思い悩みますが、最終的にはオランピアの願いによって無事に人間の体を手に入れて結ばれる感じです。

ヒムカきゅん、容姿はもちろんオランピアのことが好きすぎて挙動不審気味なとこも可愛いんだけども、私はいわゆる「人外」に萌えるのは難しいなあと再認識するルートでした。
幻奏喫茶アンシャンテも一応全員攻略しましたが、いまいち萌えなかったんですよね。人外好きじゃないならなんでキャッチコピーが「異世界、人外、喫茶店。」のアンシャンテ買った?と思われるかもしれませんが、新作は全て押さえたいのが乙女の性。(あとどうでもいいかもしれませんが、アンシャンテで魔王や妖精が「人外」を自称するの違和感ありませんでしたか?人外という呼び名は人間中心の人間目線のものでは?)
でも神サマなんて呼んでない!の碧依は結構萌えたんだよなあ。なんでだろう?主人公の生活に寄り添いすぎて感性がかなり人間に寄ってたからかな。あまり浮世離れしていると萌えにくいのかもしれません。

あと、このゲームはやっぱり性的な描写が多く、ヒムカきゅんのルートも例外ではないのですが、興奮するのもちょっと難しいなって…時貞きゅんでギリギリだったからな…外見年齢17歳以上はあってほしいですね。できれば20歳以上。ヒムカきゅん15歳くらいに見えるので…。神様なので実際は何十年も何百年も生きていると思いますが。

あとこのルートにおける柑南の悪役っぷりがよかったです。歪んだ島で歪みを抱えて育った柑南。オランピアへの強い悪意もそれだけ彼女に心を乱されているということですよね。ビジュアルも声も好みなのでぜひ攻略させて欲しかったな…むしろこういう男を恋に落としてなんやかんやで改心させられたりするのが乙女ゲームの素晴らしいところじゃないですか?


朱砂(cv.松岡禎丞)

最後はメインヒーローの朱砂!真打の名に恥じない内容のルートだったと思います。
朱砂、コトワリの仕事が忙しいからか他のキャラのルートではやや影が薄い気がするので(玄葉はよく黄泉に現れるので他ルートでも出番がある印象)、本人のルートでようやく向き合えたような感じがしました。それはそれで真打感があっていいと思います。

朱砂はオランピアと出会ったばかりの段階から、彼女の気の強さやこの島を変えたいという意思に惹かれていたようで、朱砂ルートの恋愛模様はどちらかというとオランピアが攻略されている感じでしたね。
表情を変えずに淡々と物事に対処する姿勢から作中では鉄仮面と呼ばれている彼ですが、接しているうちに意外と融通も効くし心優しく公正で正義感の強い性格であることがわかってきます。
オランピアの方は、初対面時の朱砂の態度が無神経に見えたために「こんな人好きになるものか!」と意地を張りますが、そうでもないとマッハで恋に落ちてしまいそうなくらいにはいい男です、朱砂は。

あと声もいい!!シャレードマニアクスのソウタくんがきっかけで松岡禎丞さんを好きになったのですが、あんまり頻繁に乙女ゲームに出ない方だと思うので今作でたくさん声を聞けて嬉しかったです。大人を演じていてもどこか少年らしさを残している声なので、松岡さんがクールな朱砂を演じることで彼の根底の青臭さ、愚直さみたいなのが窺えるのがいいと思いました。

意地を張っていたオランピアも結局朱砂の魅力には逆らえず、デートを重ねるうちに恋に落ちていきます。
社会的立場も悪くない朱砂との恋愛に障害はないように思えますが、そうはいかないのがオランピアソワレです。
朱砂ルートにおける障害は、朱砂がスサノオの生まれ変わりであること。
このあたり、設定が複雑で私はよく理解できていないのですが…どうやら、朱砂はスサノオとしての運命を背負っており、このままだとオランピアを殺すことになるとのこと。その運命に抗えるのかというのがこのルートの肝のようです。
最終的には意思の力で神として生きる運命を拒否し、人として愛を勝ち取ったという感じです。

問題が解決する前、瓦版を真に受けてオランピアを迫害する島民から逃げた先の隠れ家で二人は初めて性交渉に及ぶのですが、オランピアを押し倒す朱砂の焦れた様子が色っぽいです。焦れていても、頑になっているオランピアを口説いて同意を引き出してから実際に事に及ぶあたりが朱砂だなと思います。現代のスパダリ。
髪キャンが発動しなかった(髪色が変わることを知っていたため動揺しなかった)のにもメインヒーローの風格を感じました。

 

総評

これで一応、全キャラ攻略完了しました!!(バッドエンドはやっぱり見てませんが…)
好みだった順に並べると

璃空時貞朱砂玄葉ヒムカ
って感じです。時貞くんが最推しになると思っていましたが、最初に攻略した璃空が後からじわじわ来て今作の最推しに。他のキャラのルートでも、無茶するオランピアを必死に止める(けどあっさり無視される)璃空がやたらと可愛く見えるのです。
生真面目で島のしきたりに従順だった璃空ですが、オランピアの影響で変わっている…というか、本来の公正を重んじる心を呼び覚まされている感じが他のルートでも読み取れるのも良かったです。

 

最後に今作の良かった点、不満だった点をまとめて終わります。
良かった点
・絵がいい
さといさんの絵柄、アジアンファンタジーにぴったりですね。言うまでもないですが本当に絵が素敵でした。立ち絵が綺麗なだけじゃなくスチルでも崩れないし。
あとBGMもいいと思います。幻想的でドラマチックで、ストーリーの雰囲気を邪魔しないけど耳に残ります。タイトル画面の曲が特に好き。壮大でワクワクします。
・一本筋が通ったシナリオ
どのルートでも、島の制度に疑問を抱き、変えていきたいというオランピアの目的は変わりません。
そしてどのルートでも、宿命を背負わされても人間らしく生きることを諦めない人々の物語という点が一貫していると思いました。
(璃空ルートでは青を相手に選んで子を残すという宿命、時貞ルートではマレビトとして島に奇跡をもたらすという宿命…といった感じで)
そのため、全てのルートをひっくるめて一つのゲームとして完成度が高いものになっています。

不満だった点
・サブキャラの掘り下げが物足りない
このゲーム、サブキャラがけっこう多いです。そのおかげで世界の奥行きは増しているのですが、せっかく面白そうなキャラクターが揃っているのに一人ひとりの掘り下げが物足りないのが少し残念です。
前述したように柑南は攻略できないのがもったいないキャラクターだし、
海浬も、作中ではオランピアにデレるまでいきませんでしたが、明日羽のことを彼なりに大事にしているところから人間らしい情を感じるので、もっといろんな面を見てみたかったなあ。
嫌われ役の薙草も掘り下げようはあったと思います。あのザ・天供島の貴公子が実際どのような過程を経てできあがるのか興味あるし。

・全体的に下世話
ある意味神話らしい世界観と言えるのですが、子を残すことがとにかく重視される世界でみんなカジュアルに結婚や生殖の話をします。そろそろ相手見つかった?とか早く子どもの顔が見たいな、レベルのことはしょっちゅう言われます。
乙女ゲーマーの年齢層も上がってきていると思われるので、子作りをせっつかれるシチュエーションをフックにして感情移入を誘おうとしたのかもしれませんが、それにしてもちょっとうんざりしてしまいます。
自由な結婚ができない島の制度は作中で改めるべきものとされていますし、実際エンディング後に改められていくと思われます。しかし男と女は番うもの、子どもは当然産むべきもの、という価値観については一切批判されることはありません。作中でオランピアが階級制度に反対する根拠も、愛し合う男女が番になれないのはおかしいというのが大きいように見えます。
オランピアは大団円の朱砂ルートで神になる運命を回避しますが、貴重な白として子を残さなければならないという要請には全く疑問を抱かないまま終わります。どちらも生き方の押し付けという意味では同じではないかと思いますが、後者はオランピア自身の希望とマッチしていたために疑問を抱かなかったのでしょう。
なので色による階級制度が撤廃されても、結婚したくない人、子どもを産みたくない人にとってはまだまだ天供島は居心地が悪いだろうなーと思います。自分がそういうタイプなのでなんだか気になってしまう(乙女ゲームは大好きだけど、いやだからこそ?現実の恋愛に興味が持てないし、子どもも欲しくない)
女性の地位向上についても発展途上であることは珠藍大姉関係で触れられているし、まだまだこれからということでしょうけどね。
別に結婚しなくてもいい、子どもを産まなくてもいいという考えが現代と同程度に支持を集めるようになるまで何千年かかるのかな。